前兆・出産・トラブル

う~ん、う~ん。お腹が痛いよう。もう生まれてくるのかしらー。
それともなにかのトラブル?
出産前の合図ってのが犬にもあるんだ。それが分かっていれば大体どのタイミングで生まれるか分かりやすくなるんだ。
そして順調に終わることもあれば、トラブルもあるかもしれない。そんな時、飼い主さんもパニックにならないためにもここはしっかり勉強しておこう。

出産前の前兆
体温の低下
出産予定日の数日前(1週間前)から、朝と夕方の2回、母犬の体温を測定してノートに記入しておきます。分娩の開始を正確に知る方法として、体温測定があります。体温の測定方法は、肛門に体温計を挿入して測る直腸温が理想です。
犬の平熱は直腸温で38度~38.5度くらいですが、出産日が近づいてくるとその2日くらい前から体温が徐々に下がってきて出産前の9時間前後は36.5~37.2℃ぐらいに下がります。
体温の降下が認められるようになると大体その1日以内に分娩が開始されますが、この現象は 分娩に際し母犬の全身筋肉の緊縮による体温の上昇を予防する意味と低温による疹痛軽減の効果も含まれています。胎児にとっても代謝が抑制され生命維持への有利な点もあると考えられていますが、 最大1度以上の降下がありますので適宜の間隔で検温していれば正確に予測がつきます。また犬が平熱から体温が下がるのは低体温症と分娩前しかありません。
検温は直腸でしますが、次のような下降が認められます(あくまでも目安)
通常体温 | 分娩1日前 | 約9時間前 |
38.3~38.5℃ | 降下始まる | 36.5~37.2℃ |
出産が近づいてくると、産室に入って巣作りをしたり、不安そうに飼い主に甘えてきたり、なんとなく落ち着きが無くなってきます。
出産間近には37度以下まで下がり、そこから元の体温に戻り始めます。一番下がった体温が上がり始めてから約9時間後くらいあとに陣痛が始まり出産が開始されます。
37度前後、又は、 それ以下の36度台まで下がれば、 半日程の内に分娩開始と覚えておけば良いでしょう。 なお、この降下した体温は分娩終了後、 間もなく平常に戻るようです。もし、1時間以内に戻るのであれば、母体内に胎児がまだ残っているか、 否かの判断に役立つ事でしょう。
食欲の変化
出産当日になると、食欲が無くなり、軟便または下痢便をするようになります。
これはお腹の中を空にしてから出産に臨むという、本能的な行動の一つです。
当日は食事をしないようになるのが通例ですが、 食いしん坊な犬によっては平気で食べる犬もいます。まだ出産はないと思わせておいて、数時間も経たないうちに陣痛が始まり、あわてさせられるケースもあります。
普通は半日くらい前から食事はしないようになり、もし、食べても嘔吐するなどしたならば、間もなく出産が始まるので犬から目を離さないようにします。
陣痛の始まり
出産が間近に迫ると、陣痛が始まり、犬は精神状態が不安となりうずくまったり、わずかなな震えが見られ、同時に呼吸が速くなってきます。これを何度か繰り返していくうちに陣痛が徐々に強くなってきます。 そして床を強くガリガリと引っかいたりする挙動をあらわします。 そのうち、その間隔が狭まり胎仔の出産となりますが、普通は1匹あたり数回ないし10回ほどの陣痛で産まれてきます。
陣痛が強くなってくると早い呼吸を一瞬止めて腹部を硬直させ、力む様子が見られてきます。
更に強い陣痛が来ると犬は立ち上がって排便をする時のような体勢をとり強く力むようになります。この強い陣痛を繰り返しているうちに胎児が子宮から膣産道に移動してきて、陣痛とともに一気に排出されていきます。
立ち上がらず、横になったまま出産する犬もいます。
出産
出産の時間
出産は夜間になることが多いといわれていますが、昼間始まる例も多く、 夜間に始まった出産でも仔犬の数が多いときは翌日太陽が高くなる頃までかかることが結構あり、夜間と決まったものではありません。落ち着いてる時に陣痛が始まりやすいので、昼間だと明るかったり、周り騒がしかったりと気が散ってしまいますので、暗く静かになった夜が出産が多くなる理由でもあります。
強い陣痛が続き、外陰部から膣の中に水様物が入っている薄い膜が見えてきます。
この薄い膜は尿膜と羊膜です。
尿膜は既に破れている場合が多く、それによって水分が膣より出てくることを破水といい、産道をなめらかにする役目をしています。
目に見えている羊膜の中に胎児がいて場合によっては羊膜もやぶれていて、胎児が直接見えることもあります。しかし、難産にならない限り心配ありません。
ここまで来れば最後の強い陣痛によって羊膜に包まれた状態の胎児が一気に排出されて無事出産となります。
介助してやるにしても、第1仔はそばについていて見守っているくらいにとどめて子犬の処置は母犬に任せてみます。胎仔は母犬の子宮内では丁度レモンの中央部を引き伸ばし、そこへ腹巻きをしたような形で存在しています。出産時の形もほぼ同様です。胎仔は殆どこのままの状態で胎膜も破れることなく産まれてきて局部からその一部が見えた時点で、母犬が胎膜を食い破り羊水が流れ出します。やがて仔犬が産まれてくるのですが、母犬がこの胎仔の入っている羊膜を食い破らず、そのまま産み落とす時もあります。それでも母犬がこの袋を食い破らずに無関心でいるような時は、介助の人が取り上げてやらなければなりません。介助のやり方は後ほど。
母犬の対応
母犬はすぐに胎児を包んでいるようやくを舐めて切り、へその緒を食いちぎり、羊膜や胎盤を食べて処理します。産まれたばかりの子犬の体を夢中になめ回しますが、この動作は乱暴でかなり荒い取扱いをします。
それが良い刺激ともなるようで仔犬は産声をあげるようになり、 ヘソの緒もこのなめている際に母犬が食いちぎって食べてしまいます。
また、母犬は子犬に付着している羊水を舐めて綺麗にしてやります。
子犬はこの時の舌による刺激で呼吸を促され産声を上げます。子犬は生まれてすぐに母犬の乳房を探して吸い付いて乳を飲みます。母犬は次の陣痛が始まるまで子犬を舐めて世話をします。
母犬によっては、 このヘソの緒を食いちぎる時に、 前歯で食べていくことがあり、 時にはヘソの緒だけに止まらず、仔犬の腹の皮まで食べてしまうばかりか、 甚だしい場合は腸まで引っ張り出して食べるようなこともあります。このような時には介助者が取り上げてヘソの緒を切ってやらないと仔犬は助かりません。
へその緒の除去の仕方
極端な例でなくても、ヘソの緒は引っ張って切られるとヘソの部位から抜けるため出血があり、これが中々止血せず、のちの発育にも支障が出るようですから例え母犬が始末したあとでも、
あらためてハサミでへその緒を切っておいた方が良いと思います。
へその緒を切ってやるときは、次のようにします。
糸と曲がったハサミを用意しますが、他に鉗子(カンシ)があれば、なお手際よく行きます。
- 結ぶ糸は、ミシン用の絹糸によりをかけ二重にしてより合わせ、2回繰り返し1血程の太さにする。
- このより糸を15cm程に切り、よりが戻らないよう両端をそれぞれ1回結んでおき、これを頭数分より多めの本数用意し、消毒用アルコール溶液に浸しておく。
- 結ぶ位置は腹から1cm程離れたところで、一重回しで出来る限り強く結ぶ。
- この結んだ糸の両端2本と、ヘソの緒をそろえて持ち、結んだところから丁度1cm位のところで、全部一緒にハサミで切断し、これは母犬が気付かないところに捨てる。
- 結ぶ位置が長かったり、 切り方が長くて、母犬の前歯にかかる程の長さであると、折角処理してやっても歯で引っ張る恐れがあるので長すぎないようにする。
- ヘソの緒を結ぶ時はなるべく保定する助手の人が入ります。
- 助手がいない時には、鉗子(カンシ)を使い、結ぶ位置でへその緒を圧定しておいて、この一人でも処理できる。子犬の腹側で結ぶようにすると、一人でも行える。
- ハサミは外科鉄の湾曲したものを用意しますが、 鋭利なものでないと滑って切りにくい。(この曲がったハサミは狼爪切除にも使える)
仔犬に付いて残ったへその緒はそのままにしておいてよく、時間が経つとしほんできてやがて乾燥して3日もすると自然に脱落する。
次の子犬が産まれるまでの対応
1頭出産してから次の陣痛が来るまでの時間は、個体差がありますが約15分~1時間位です。
それまで母犬に任せて次の陣痛が始まったら、それまでに生まれた子犬を小さめな箱かバスケットに入れて避難させます。
この時、母犬が心配させないように、子犬が見えるようにします。
しかし、鳴く子犬が気になり出産に集中出来ないなら鳴き声も聞こえない場所へ移すことも大事ですので母犬の様子を見て対応しましょう。
全頭出産する時間
これを繰り返して出産は終わりますが胎児の頭数が多い場合には、数時間から半日以上に渡ってお産が続くことがあります。
大体1頭に30分~1時間と思っておいてください。
あまりに長時間になると母犬が疲れてしまい陣痛微弱となり、難産になることもあるので注意が必要です。出産に立ち会った時には子犬の数と母犬が食べて処理したものを含めた全ての胎盤の数が同じであることを確認してください。胎盤は1頭の胎児に1つ無ければなりませんので胎盤が少ない場合には、まだ子宮の中に残っているということになります。
これを後産停滞といって、胎児がいないのに陣痛が起こりそれを排出しようとして、まだお産が続くように見えたりします。
それでも、胎盤が出てこないと、産後何日も下り物が続くようになりますし、子宮の病気にもなりかねません。胎児が出てこない陣痛が続いたり、下り物が長く続くようでしたら動物病院に相談ください。
產湯
母犬が自分で処理した子犬はそのまま母犬につけておいてよいのですが、耳の付け根、 肘の内側、 尾の付根、肢端の指の間などはふき取りが不充分になり易く、そのためか1ヵ月くらい育った頃には体表にかさぶたが出ることがあるので、出来れば産湯をつかわせた方が良い。
産湯の浸かせ方
- 家庭用の洗面器が使いよく40~42度位のお湯で石鹸は使わず手でよく洗ってやり、お湯は一度取り替える。(風呂場にお湯をためておくのも良い)
- 水分を拭き取る時には、乾いた清潔なタオルを使い全身をマッサージするように強く拭いてやると、少々元気の無かった仔犬も大きな声で鳴くようになる。
- 新生仔の目と耳は完全に塞がっているので、お湯の中に少々つかったくらいでは水が入ることは無い。
- 必ずしもではないですが、泳浴させる前に、 仔犬の鼻端を人が口で吸ってやると、鼻腔内に入った羊水などが排除され、子犬のためには大変良い効果がある。※この処置をしたあと人の口内を水でよくゆすいでおかないと、2、3日経って一種の口内炎で、 口内粘膜が荒れてくるのでうがい用の水を用意して必ずうがいをするようにする。
- お湯で後肢を洗ってやる際、狼爪があったならば、浴後切除する(この方法は後述)
- 産湯後、体重を測定記録しておくと、あとで発育度合いを知るのに都合が良いが、識別用の番号のついたゴム環の首環も必要となる(後述)
仔犬の胎位
多少の時間差はあるにしても次から次と元気な仔犬達が生まれてきますが、頭から産まれてきたり、尻から出てきたりとバラバラです。その確率は50対50で犬の場合は尻から産まれてきたから逆子で異常であるとはなりませんが、この尻から産まれてきた子犬は気のせいか産声も弱いように感じられます。
逆子は鼻腔内の羊水の量が多いことがあるので、特に注意してよく吸い出してやるようにします。
出産した子犬の介助人(お世話)
産まれてきた子犬を母犬についておくときに介助人が注意することは、
次の分娩のための陣痛が始まると母犬はそれ以前に産んでる子犬のことは忘れてしまうときがあることです。
大型や中型などは母犬が起きたり、座ったり、回ったりするときに子犬を踏んだり、あるいは母体の下に敷いてしまったりする心配があるので子犬の居場所を移してやるようにします。
このような心配をしないために、 次の陣痛が始まるまで産まれた子犬を全部の出産が終わるまで母犬から離しておく方法もあります。
母犬にしてみれば大事な子犬を取り去られるわけですから探して不安がったりとそれなりの注意が必要です。陣痛が始まるとそれどころではなくなり子犬を取り去られることすら忘れることもあります。
しかしながら子犬を踏まぬよう気にしながら出産する犬もいるので様子を見ながら行うようにしよう。
子犬の一時保管方法
- 子犬の収容は、みかん箱ぐらいのような大きいのを利用するのが良く、 深さも適度です。犬種により選びましょう。
- 温度は体温に近い保温が出来るようにし、冬は保温マットを入れてやるなどする。
- 子犬が母犬から離れたところで、 鳴き声などが絶対に聴こえないようにする。
- 産まれたばかりで離してしまうと、母犬は子犬の存在は忘れているように見受けられる。
- 出産が全部終了した時点で、 汚物の処理、 産室内の清掃をすませて、全子犬を揃えて母犬の懐お腹に戻してやる。
- 母犬は仔犬の数を数えるように、次から次と仔犬を舐めてやっているうちに、親としての母性が強くなっていくようで、人が近寄ったり、 手を出したりすると、警戒のまなざしで見たり、 仔犬を抱え込んだりする。
- 知らない人や信頼関係が薄い人は安易に近づけないようにしましょう。子犬を取られると思い相手を噛んだりすることもあります。勿論、防衛本能として飼い主にも噛むことがあります。
- 犬によっては、最初から子犬に手を触れるのを嫌がり、手に噛みついたり、 時には子犬を食べてしまうこともある。このような時には手を出すわけにはいきません。
カゴにまとまる仔犬
助産方法と介助の範囲
犬の出産での胎児は羊膜に包まれて出てくるため、比較的スムーズに分娩することが出来るので頭側から分娩しても後肢から分娩しても正常分娩です。
正常分娩の場合には、原則的に母犬に全てを任せるのが1番良い方法であり、むやみに人が手助けし過ぎると他にもできない犬になってしまいます。
出産にあたって人間の介助がある程度必要なことはこれまでのでわかって頂けたことと思います。
ただしその介助の程度をどのくらいにとどめるかを考えてみますと母犬に全てを任せっきりで全然手をかけない場合を除いて
次の3つくらいに分けられるでしょう。
①出産中は側についやる
安心させるだけで立派に助産の役割を果たしていることになります。
子犬が母犬に踏みつけられたり、母体の下敷きになったりしないように気を配る程度にとどめその他は母犬に任す。
胎児が産道に入ってきた時に羊膜が破れてしまい、外陰部から胎児の頭や手足が出ている状態でありながら、強い陣痛が続いてもそれ以上出てきそうになった時には人が手を貸してやらなければなりません。外陰部から出ている頭や手足をガーゼやタオルなどで滑らないようにしてしっかり掴み、陣痛に合わせるようにゆっくり無理をしないように引っ張り出してやります。出にくい時や引き出す力の入れ具合は、不慣れな人には難しく感じるでしょうし、大変勇気が必要です。このような事態になってしまった時には、すぐに動物病院に連絡して指示を仰いでください。外陰部から胎児の頭や手足が出ている状態、それ以上出てきている状態でそれ以上出てきそうにない時に、腹部を圧迫すればその圧力で出てくるなどという人がいますが、そのような単純なことで出産出来ることはありません。無理なことをして子宮破裂を起こし、悲惨なことになった例もありますので決して腹部を圧迫するようなことはしないでください。
②なるべく母犬に任せるが、へその緒の切り直しなど必要に応じた最小限度の介助にとどめる。
初めての出産や毎回人が手助けをしている犬の場合は出産はしたものの、羊膜やへその緒の処理をしないでただ見ているだけの母犬がたまにいます。また初めての出産で驚いてしまい、初めはやり方が分からないこともあります。
この場合にはとりあえず羊膜を人が破って子犬が呼吸できる状態にしてやり、 濡れたままの子犬を母犬の鼻先に持っていって舐めるかどうかを見ます。舐めない時には、【ヘその緒の除去の仕方】で説明した通り腹から2mくらいの所を糸で結んで胎盤側の部分を切り落としてから子犬を産湯で付けてマッサージをしてタオルなどで拭いて乾かします。
胸の部分を強めに擦ってやることによって子犬が呼吸をして産声をあげます。
その声を聞いて母犬が興味を示したら鼻先に近づけてみます。母犬が子犬を舐め始めたら後は母犬に任せて様子を見ます。舐めないようなら、子犬を母犬の乳房につけて母乳を吸わせてやります。乳を吸われることにより、 母性本能が出てきて面倒を見るようになります。
③産仔のとりあげ、産湯など介助側が出来る範囲内で手をかけて面倒をみてやる。
羊膜や胎盤は母犬が食べて処理しますが、多数出産した場合などでは食べ過ぎて下痢をすることがあります。
2~3頭分食べさせたら後はできればすぐに片付けてしまうようにします。
母犬が噛みちぎったへその緒から出血がある時には、糸で結紮して血を止めてやります。
獣医師への連絡
陣痛が始まったにもかかわらず、胎仔が出てくる気配が一向にない。あるいは2~3匹産まれてきたが、その後は休んでしまい胎仔は残っている様子。でも陣痛も時々あり、次がどうしても産まれてこない。そしてこのような状態でもう半日以上も経っている…等の場合は獣医師に依頼して診療をしてもらいます。
子犬と子犬の間隔が空いて、陣痛も止まってしまったりしても母犬が元気でいる時は1日位様子をみています。
中休みをしてから再び出産が始まることが結構あります。
途中まで出てきた胎児が大き過ぎたり、 陣痛が微弱であったりしたためになかなか出てこない時にはいきみに合わせて引き出すようにしてやることも必要になりますが、初心のうちはあまり手を出さない方が良いでしょう。
介助に際していくら厳重に手指を消毒しても、或いは介助を全然しない出産であったにしても、殆どの犬が大なり小なり感染症を起こしているようです。 出産が全部終了した時点で、 獣医師に相談しておいた方が賢明です。
出産の遅れ(トラブル)
子犬は大体30分から1時間くらいの間隔で産まれてきますが、この間隔が1時間以上になる時は遅産といえましょう。
だからといって、すぐに獣医師を呼ばなくては…とまで考えないで結構です。
大型の場合、普通で5、6匹。多いときは10匹以上にもなります。第2以下つぎつぎと産まれてきますが、この間隔は大体30分から1時間くらいならば正常と覚えておいて下さい。
1時間以上も間が空くのは、途中で産仔に支障が起きたか、母犬の疲労、陣痛の微弱などのうちどれかでしょう。
陣痛の微弱による場合は、 最終手段の子宮収縮剤(陣痛促進剤)の使用などによって解決するのですが、トラブルの場合に使用されると薬効によって子宮が収縮するため、胎仔の死につながることになるので安易に投与するわけにはいきません。
最終手段を使う前にその時出来る対策
トラブルを解消して無事出産させる方法
子犬の産まれる間隔が1、2時間くらい空くことは間々あることです。
出産のトラブル
2本の道路が1本に合流するY地点で鉢合わせ
その解消策とも言えるのが、前に書いた元気づけの卵黄入りミルクと産室から引き出すことにあるのです。
子宮体の合流点で相互に譲らず組み合ったままの2つの胎児は母犬が起き上がってミルクを飲む、 産室から引きだされて歩くことが母体(子宮体)の体位の運動で変化してそれがきっかけで渋滞が組み合った胎児の位置にちょっとしたズレが生じて先後の順がつき、 先に進むことが出来るのです。
安心から生まれた解決策
6、7匹と思っていた胎児の産出も一応終わり、 母犬のお腹もぺちゃんこになり陣痛もなくなったのでこれで終わりかと母犬を外に連れ出し排便させて産室の清掃、毛布やシーツの取り替え、母犬を戻したところまもなく仔犬がそれも2匹続けて産まれるようなことが、再三あったことから考えついた方法なので効果があります。覚えておいて下さい。胎仔が残っていることが確実であり、陣痛もあるのだが胎児が一向に産まれてこない。或いは、陣痛がだんだん微弱になり、母犬も疲労が目立ち、対策も試みたが半日もそのまま経過するようであったら、獣医師の来診を求め処置してもらうのが良いでしょう。
難産の兆候
正常な分娩では犬によって個体差はあります。軽い陣痛が始まってから2時間位までには陣痛が強くなり、さらに強い陣痛によって胎児を出産します。 胎児は羊膜に包まれたままで出産されてくるか、もしくは羊膜が破れた状態で胎児だけが先に出産されて後から羊膜と胎盤がついてくることもあります。ところが強い陣痛が何度も発現しているにもかかわらず胎児が出てこない場合や強い陣痛の後に破水が見られたり、胎盤が剥離した時に出てくる緑色排出液が見られたのにもかかわらず、30分~1時間経っても胎児が出てこないような場合があります。
1時間ぐらいの場合、先ほどのトラブルを解消して無事出産させる方法で対応しましょう。
それでも弱い陣痛が見られるようになってから2時間も3時間も経過しても、強い陣痛が発現してこないような場合、母体側に原因のある陣痛微弱と考えられますので注意が必要です。獣医師に相談しましょう。
犬種やサイズによっての分娩異常
現実にほとんどの犬は安産であると思いますが、必ずしも犬のお産がすべて安産であるとは限りません。超小型犬やブルドッグ、ペキニ ーズといった頭の大きい犬種では難産になる確立は高いです。中型犬以上の大きさの犬においても産道に下りてきた胎児の形態や出産頭数によっては難産になることがあります。
超小型犬や難産になりやすい犬種では、交尾をした時点で難産になることを覚悟しておくとともにかかりつけの動物病院に予定日を知らせて、夜遅くても診療してもらえるのかどうか尋ねておくと良いでしょう。
陣痛が始まったら、難産にになるかどうか分からなくても動物病院に連絡を入れておいてください。
難産の原因
難産を引き起こす原因として考えられることは種々さまざまですので、あらゆる可能性を考えて出産に立ち会わなければなりません。順調に出産が進行するかどうかをよく観察して、最後の胎児が無事産まれるまで母犬の側にいてあげてください。手をつくしても自然分娩を望めそうにない難産になってしまいそうな時には、動物病院に連絡をして指示を仰ぐと共に帝王切開による出産をさせるほうが母子共に助かる確率は高くなります。
小型犬・超小型犬である
小型犬・超小型犬については全般的に注意が必要ですが、特に母体が小さいほど難産になる可能性があります。
骨格的に頭部が大きい犬種である場合
ブルドッグ、ペキニーズ、パグ、狆などの短頭犬では難産になりやすいと言われています。
初産である
出産経験のある犬に比べて初産犬の方が難産になりやすいことがあります。4~5歳以上の初産の場合には特に注意が必要です。
幼児が大きく育ち過ぎてしまった
犬種に関係なく、胎児の数が1~2頭と少ないと成長する幅がある為、胎児が大きく育ってしまい、難産になりやすくなります。頭数が入りにくい小型犬種の方が注意が必要です。事前にレントゲン検査を受け、骨盤腔と胎児の頭部の大きさを比較しておけば妊娠の可能性の有無の判断に役に立ちます。また、妊娠中はしっかり運動して過剰な成長を防いでおきましょう。
胎児の失位による
胎児の失位とは、胎児が子宮から産道に移行されてくる際に頭や後肢からスムーズに出てこないで、首や体が捻じれて肩や頭頂部から出てこようする異常体勢になってしまうことをいい、産道を通過することが困難となり、難産になってしまいます。先ほどのトラブルを解消して無事出産させる方法で対処しましょう。
陣痛微弱による
陣痛微弱は、出産開始時から弱いものもありますし、老齢なものや肥満気味のものにも見られる傾向があります。また、胎児数が多い時には、時間の経過と共に母犬が疲労してきて、陣痛が徐々に弱くなってくるものもあります。その結果、胎児の排出が困難になってきます。先ほどのトラブルを解消して無事出産させる方法で試してそれでも変わらなければ陣痛促進剤の投与によって強い陣痛を起こさせて、出産させるようにします。それでもうまく行かない時には、早めに帝王切開をした方が良いと思われます。
骨盤腔が異常に狭い
先天的に骨盤腔が狭い場合や、交通事故などにより骨盤を骨折し、その結果骨盤腔が狭くなってしまった場合などにおいては、 産道が広がらず胎児が通過できないために難産になります。
ごく稀なその他の異常
胎児そのものに奇形が見られヘルニアがあり、そのヘルニア輪から子宮が脱出してしまった場合などでも難産になる可能性があります。出産の直前に不慮の事故に遭ったり、無理な助産処置で腹部を圧迫し過ぎたために子宮破裂を起こすことがあります。犬は疼痛とショックでぐったりとしてしまいます。こうした場合、緊急手術をして、まず母犬を助ける手段を講じます。時間の問題ですが、胎児の生存は難しいと思われます。
それでも出産の遅れ(トラブル)
今まで述べた対応でも難産なら病院へ連絡します。難産の兆候が見られた時、獣医師は、初回陣痛からの経時的な変化を飼い主に尋ね、触診、 内診、レントゲン検査などによって胎児の確認、または後産停滞なのかを判断します。自然分娩が可能なようであれば、陣痛促進剤の投与によって様子を見ます。また、胎児がすでに産道に入ってきている場合には出産させるよう助産処置を施してみます。自然分娩が不可能であると判断した時には速やかに帝王切開手術を実施します。判断よく帝王切開手術を実施した場合には、術後の経過も予後が良いはずです。帝王切開で胎児を摘出した場合、母犬は麻酔から覚めると子犬の面倒をすぐに見始めるのが普通ですが、初産犬の時には母犬が麻酔から覚めても子犬の面倒をみようとしないことがあります。
このような時には、子犬に乳首を咥えさせて乳を吸わせてみます。乳を吸われる刺激で母犬としての本能が働いてくるはずです。
それでも子犬の面倒をみようとしない時には子犬を舐めさせる方法を考えてやってください。母犬の陰部から出てくる下り物や血液を子犬の体に塗りつけて、母犬の鼻先に持っていってやると、ほとんどの母犬はその汚れを舐め始め、子犬を舐めることを覚えてくれます。
帝王切開をした犬は、その次の発情の時には交配をしないほうが良いといわれています。また、次の出産も帝王切開になる可能性が高くなるので、そのつもりで交配をしてください。